法学部長 高田 篤

はじめに

高田篤法学部長

 法学部長の高田篤です。新入生の皆さん! 追手門学院大学法学部へのご入学おめでとうございます。皆さんのご入学を心より歓迎いたします。

1 伝統の形成者として

 追手門学院大学法学部は、昨年4月に開設されました。皆さんは法学部二期生です。一期生の方々は、文字通り零からの、不安を抱えてのスタートでした。しかし、その先輩方がまじめに、熱心に勉学に取り組んだおかげで、皆さんが学ぶ環境はこの1年でずいぶん整いました。

 とは言え、開設二年目の学部です。まだ発展の余地が大いにあります。その中身と方向を定めるのは、皆さんです。10年後に振り返り、追手門学院大学法学部に何か特徴、伝統ができているとすれば、その多くを作ったのは、皆さんを含む学部開設期の学生たちです。過去のしがらみに囚われず、自分自身で道を切り開くというのは、滅多に出会えない貴重な体験です。是非、積極的に取り組まれるよう期待しています。

 もちろん、伝統がなく、先輩が多くはいないのは、不安かもしれません。そこで、法学部では、様々な分野で活躍される方々からお話をうかがう機会を設けるなどして、皆さんが自身の生き方を考えるのをサポートします。昨年度は、企業法務や公務員を念頭においた講演会を開催しました。そうした機会を活用し、自分の将来に対する見通しを具体的なものにしてください。

2 法学を学ぶことの意義

 皆さんは、これから法学部生として法学を学びます。ところで、法学を学ぶことには一体どんな意味があるのでしょうか? 公務員試験、各種資格試験、司法試験などの受験を考えている人にとって、法学は試験科目かもしれません。しかし、資格試験等を受けないまま法学部を卒業する人も多く、そうした人たちもまた、「法学部卒」として社会では期待され、処遇されます。では、社会では法学のどういう点に価値があると考えられてきたのでしょうか?

 法学には憲法、民法、刑法などの様々な分野がありますが、どれを学ぶにしてもその分野の具体的問題に取り組みます。法学で特徴的なのは、具体的問題を扱いながら、それが直ちに法体系全体を考えることにつながるということです。つまり、法学の学習を通じて、個別的・具体的に分析する能力と、総括的・体系的に考える能力とが、同時に育成されることになります。そして、日本の法学では、法を歴史的に把握し、また、外国の法と比較しながら検討する、ということが一般的に行われます。そのように歴史的に、かつ、比較法的に考察することが当たり前になると、変化し、発展していく社会の現象を、客観的に、かつ、相対的に把握する力が養われます。個別的・具体的かつ総括的・体系的に分析できる能力。客観的かつ相対的に考察する能力。そのような能力を持った人材が、これまで、日本社会の多くの分野で評価されてきました。そのような能力は、現在・将来の社会においても、間違いなく重要でしょう。卒業後、皆さんには、そのような能力が期待されるのです。

3 目的のための手段ではない学び、それ自体に価値がある学び

 そういった能力を、学部生の間にある程度育てられれば、その基礎の上に、卒業後もそれにさらに磨きをかけられます。追手門学院大学は、「生涯にわたって学び続ける」ことをモットーとします。法学部での学習の肝もまた、一生ものの力を育むことです。そのために法学部では、広い教室で講義科目を受講するだけではなく、1年生から4年生まで各学年の学習段階に応じた少人数制の「ゼミ」に所属し、先生や他の学生と共に深く広く学びます。これだけ充実した少人数教育の機会を提供する法学部は、なかなかありません。

 このような遠い未来に向けての学びが、大学では一番大切なのです。しかし、多くの法学部生にはもちろん、近い将来の具体的な目的のための手段としての学びも必要です。例えば、各種資格試験、公務員試験、司法試験に合格するには、受験勉強が不可欠です。この種の勉強を効率的に進められるように、法学部では、先生方の努力・工夫もあって、講義・ゼミ以外に、課外でさまざまな勉学の機会を設けています。それについては、今日のオリエンテーションで紹介されます。そのような機会を、是非、有効に利用してください。

 受験勉強を成功裡に行い、目的を達成することは大切です。私も皆さんの成功を祈っています。しかし、皆さんが忘れてはならないのは、この目的達成は、皆さんの人生にとっては、スタートにすぎないということです。資格を取った、公務員になった、司法試験に合格した―しかし、皆さんの学びの真価が問われるのはそこからです。スタートラインにたった皆さんが、社会でそれからどのように活躍していけばいいのか。受験勉強は、それに対して何も教えてくれません。皆さんの支えになるのは、学部生として身に付けた一生ものの能力と、学生時代に積んだかけがえのない経験です。そのことを決して忘れずに、様々なことに前向きに取り組んでください。

おわりに

 学生生活では、新たな学び、出会い、経験を多くされることでしょう。数多くの刺激を受けると同時に、悩みに直面する場面もあるかもしれません。そのような皆さんにとって大切な、かけがえのない時期に、私たち教員は、皆さんに、しっかりと寄り添っていきたいと思います。皆さんが、健康で、充実した学生生活を送られることを、心から願っています。

(2024年4月1日 新入生オリエンテーションでの学部長挨拶)

2023年